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東京地方裁判所 昭和46年(ワ)983号 判決

原告

坂野一夫こと坂野一雄

ほか一名

被告

久喜自動車運送株式会社

ほか一名

主文

1  被告らは、連帯して、原告坂野一雄に対し、金二〇九万九、六五六円及びこれに対する昭和四五年七月三一日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  原告坂野一雄の被告らに対するその余の請求及び原告坂野はるゑの被告らに対する請求は、棄却する。

3  訴訟費用のうち、原告坂野一雄と被告らとの間に生じた分は、これを四分し、その三を被告らの負担とし、その余は同原告の負担とし、原告坂野はるゑと被告らとの間に生じた分は、同原告の負担とする。

4  この判決は、原告坂野一雄の勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

原告ら訴訟代理人は、「被告らは、連帯して、原告坂野一雄に対し金四一八万三、二二五円、原告坂野はるゑに対し金八〇万円及び右各金員に対する昭和四五年七月三一日より支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は、被告らの負担とする。」との判決並びに仮執行の宣言を求め、被告ら訴訟代理人は、「原告らの請求を棄却する。訴訟費用は、原告らの負担とする。」との判決を求めた。

第二請求の原因

原告ら訴訟代理人は、本訴請求の原因として、次のとおり述べた。

一  事故の発生

原告坂野一雄は、次の交通事故(以下「本件事故」という。)によつて傷害を受けた。すなわち、

原告坂野一雄は、昭和四五年四月二七日午前一〇時五〇分ころ、普通乗用自動車(足立五せ一九八号。以下「乙車」という。)を運転進行中、東京都墨田区東向島二丁目三八番七号先交差点において、前車の一時停止に伴い一時停止したところ、被告岡安義雄の運転する大型貨物自動車(埼一い七三一〇号。以下「甲車」という。)に追突され、これにより、原告一雄は鞭打損傷、腰部挫傷等の傷害を受け、昭和四五年五月九日から同年六月一〇日まで三三日間大村病院(東京都墨田区東向島六丁目六番一三号所在)に入院し、退院後も、通院治療を継続しているが、本件受傷のため、現在なお鞭打損傷による頸部痛、頭痛及び腰部挫傷による腰痛と腰椎分離症が残存し、走行不能となつたほか、陰萎となり、事故後約一年半位にわたり性行為の全く不能な状態が継続し、昭和四六年秋ころから若干回復したものの、昭和四七年以降今日に至るも月一度位の性能力しかない状態であり、今後回復の見込みはない。

二  責任原因

被告久喜自動車運送株式会社(以下「被告会社」という。)は、甲車を所有し、これを自己のため運行の用に供していたものであるから、自動車損害賠償保障法第三条の規定により、また、被告岡安は、前方不注視の過失により甲車を乙車に追突させ、本件事故を惹き起こしたものであるから、民法第七〇九条の規定により、それぞれ原告らの損害を賠償する義務がある。

三  原告らの損害

1  原告一雄は、本件事故により次のとおり損害を被つた。

(一) 治療費(昭和四五年九月一日から同年一二月三一日までの分) 金五、四〇〇円

(二) 交通費(昭和四五年四月二七日から昭和四六年一月二五日までの分)

原告一雄の通院分 金一万二、七二〇円

原告坂野はるゑら家族の入院見舞に要した分 金四、〇八〇円

(三) 診断書手数料(八通分) 金四、〇〇〇円

(四) 病院並びに医師及び看護婦に対する謝礼等 金六、〇二〇円

(五) 入院中の諸雑費(貸テレビ料金四、六五〇円を含む。) 金一万五、三五五円

(六) 見舞返費用(今井工業ほか六四名に対する返礼品費用) 金一三万五、六五〇円

(七) 得べかりし利益の損失

原告一雄は、左官関係の請負業を営んでいる者であり、多数の左官工事現場を見廻り、その仕事の監督、指図あるいは仕事の進展状況に応じて職人の配置等をなすほか、職人の募集及び世話その他一切の業務を行い、昭和四四年度における実質収入額は、金二七七万円で、一日当り約金七、六〇〇円を得ていたところ、本件事故による受傷のため長期にわたり右仕事をなすことができず、そのため、仕事に支障を生じ、その能率が落ちる等の影響を生じた。原告一雄の前記の後遺障害は、労働基準法施行規則別表第二に定める身体障害等級表第八級第二号及び第九級第一二号に該当し、同施行規則第四〇条第三項第一号により、同等級表の第七級に繰り上げられ、労働基準法第七七条により五六〇日分の障害補償がなされるべきところ、原告一雄は、前記のとおり一日当り平均賃金約七、六〇〇円を得ていたから、その五六〇日分、すなわち金四二五万六、〇〇〇円の損害を被つた。

(八) 慰藉料

原告一雄は、本件事故のため、前記一のとおり長期にわたり入通院を余儀なくされ、現在なお、頭痛、頸部痛、腰痛、陰萎による性交不能等の後遺症を残し、甚大な精神的肉体的苦痛を被つたものであり、これに対する慰藉料は金一二〇万円が相当である。

2  原告はるゑは、本件事故により次の損害を被つた。すなわち、

前記一の原告一雄の本件事故に起因する陰萎のため、原告ら夫婦間の性行為が不能になつたことにより、原告はるゑは甚大なる精神的苦痛を被つたものであり、これに対する慰藉料は金八〇万円が相当である。

四  よつて、被告らに対し、原告一雄は前記三1(一)ないし(六)、(七)のうち金二八〇万円及び(八)の合計金四一八万三、二二五円、原告はるゑは金八〇万円及び右各金員に対する調停申立書(久喜簡易裁判所)送達日の翌日である昭和四五年七月三一日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の連帯支払を求める。

第三被告らの答弁

被告ら訴訟代理人は、請求原因に対する答弁として、次のとおり述べた。

一  請求原因一の事実のうち、原告一雄の受けた傷害の部位、程度及び後遺症の点は争うが、その余はすべて認める。

仮に、原告一雄に腰部挫傷、腰椎分離症等の傷害が存したとしても、同原告の腰痛症は、事故後約五か月を経過した昭和四五年一〇月上旬ころ発生したものであるから、これらは本件事故と因果関係はなく、また、陰萎があつたとしてもこれは、原告一雄の年令による体力低下あるいは心因的原因によるもので本件事故とは因果関係がなく、仮に本件事故と若干の因果関係があるとしても、永久的なものではなく、昭和四七年七月七日ころにはすでに回復していた。

二  同二の事実は、認める。

三  請求原因三1の(一)ないし(三)の事実は知らない。同三1の(四)ないし(八)の事実は、争う。

原告一雄は、土木建築関係の工事現場に人夫等の斡旋をし、その人夫等の労賃の一部を横取りすることにより収入を得ているいわゆる手配師といわれるものであり、その収入は違法な収入であり保護されるべきものではない。また、原告一雄は多くの人夫を使用することにより収益をあげている者であり、入通院、自宅療養中も使用人に対し業務に関する指揮監督をし、本件事故前と同様の収入を得ることが十分可能であり、かつ、本件事故後もこのようにして事故前と同様の収入を得ていたものであるから、損害の発生はなく、労働能力の喪失自体ないものというべきである。

仮に、原告一雄に本件事故に基づく逸失利益があつたとしても、逸失利益に対する賠償金には課税されないから、損益相殺の法理に照らし、昭和四四年の収入金二七七万円からこれに対する所得税金四一万六、二〇〇円及び地方税金一〇万五、三五〇円を控除した残額を逸失利益算出の基礎とすべきである。また、本件事故による原告一雄の傷害は、昭和四五年七月三一日までに軽快し、同年八月一日からは通常に稼働できたものである。

四  同三2の事実は、争う。

仮に原告ら主張の陰萎があり、かつ、これが本件事故によるものであるとしても、原告はるゑは、受傷者本人ではないから、これにつき慰藉料の請求をすることはできない。

第四証拠関係〔略〕

理由

(事故の発生及び責任原因)

一  原告一雄か原告ら主張の日時、場所において、乙車を運転中、前車の一時停止に伴い一時停止したところ、前方注視義務を怠つた被告岡安運転の甲車に追突され、傷害を受けたこと、及び甲車が被告会社の所有に係り、被告会社がこれを自己のため運行の用に供していたものであることは本件当事者間に争がなく、これによると、被告会社は自動車損害賠償補償法第三条により、また、被告岡安は民法第七〇九条により連帯して、本件事故により原告らの被つた損害を賠償する義務があること明らかである。

(原告一雄の傷害)

二 〔証拠略〕を総合すると、

1  原告一雄は、本件事故により、頸部捻挫、鞭打損傷、腰部挫傷、右下腿挫傷の傷害を受け(なお、被告ら挙示の乙第一号証(大村病院の昭和四五年六月二九日付診断書)には、「腰部挫傷」、「腰痛」の記載がなく、また、同じく乙第四、第五号証(大村病院の診察費明細書)にも「腰部挫傷」「腰椎X線写真撮影」の記載がなく、更に、同病院に対する調査嘱託の結果には同病院において腰部のレントゲン写真は撮影しなかつた旨記載されているが、前掲甲第一七号証(大村病院のカルテ)によると、原告一雄が大村病院に入院中腰痛を訴え治療を受けたことが記載され(同号証中昭和四五年六月一九日、二三日及び同年七月八日の欄)、この記載に〔証拠略〕を総合勘案すると、右は単なる記載もれ、あるいは記載もれの文書を誤信して作成されたことによるにすぎないものと認めるべきである。)、本件事故直後から、頭痛、頸部痛、吐気等を生じ、また、陰萎となり、昭和四五年五月中ころからは、本件事故による腰部打撲のため、腰椎部に腰椎分離辷り症、変形性腰椎症を誘発して、腰痛を起こし、右治療のため、本件事故の発生日である昭和四五年四月二七日から同年五月八日まで大村病院に通院、同月九日から同年六月一〇日まで同病院に入院、同月一二日から昭和四六年八月一七日まで同病院に通院し、その後も昭和四八年まで、頭痛、頸部痛があるなど具合の悪いときには同病院へ通院し、その間、昭和四五年一〇月ころ国立東京第一病院へ通院したこと、

2  前記症状のうち、陰萎を除く症状は、徐々に快復し、昭和四六年三月ころには日常生活にそれほど影響がない程度に軽快し、同年八月ころにはほぼ治癒したが、その後もなお、寒冷時、雨天時には頭痛、腰痛、足のしびれ等があり、陰萎については、昭和四六年秋ころからほぼ回復に向かい、今後、次第に回復する見込みが強いこと、

以上の事実が認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。被告らは、原告一雄の腰痛及び陰萎は本件事故と因果関係がない旨主張するが、叙上認定に供した各証拠に徴すると、前段認定のとおりであり、右被告らの主張は採用する由ない。

(原告一雄の損害)

三 原告一雄は、本件事故により次の損害を被つたものである。

1  治療費 金五、四〇〇円

〔証拠略〕を総合すると、原告一雄は、昭和四五年九月一日以降同年一二月三一日までの間、大村病院及び国立東京第一病院に対し本件事故による傷害の治療費として少なくとも金五、四〇〇円を下らない支出をし、これと同額の損害を被つたことを認めることができる。

2  通院交通費 金一万六、八〇〇円

(一)  〔証拠略〕を総合すると、原告一雄は、本件事故による傷害の治療のため、昭和四五年四月二七日から昭和四六年一月二六日までの間に、自宅から大村病院及び国立東京第一病院へ少なくとも計五五回を下らない回数にわたり電車、バス、タクシー等を利用して通院し、その通院交通費として少なくとも金一万二、七二〇円を下回らない支出を余儀なくされたことが認められるところ、前認定の傷害の諸症状に徴すると、右金員の支出は、やむをえないものであり、本件事故により生じた損害と認めるべきである。

(二)  〔証拠略〕を総合すると、原告一雄は、前記認定の入院期間中の昭和四五年五月九日から同月二三日までの一五日間、同原告の身辺の世話等付添看護のため、妻である原告はるゑ及び家族の通院交通費として金四、〇八〇円を下らない金員を支出したことが認められ、したがつて、同額の損害を被つたものということができる。

3  診断書手数料 金四、〇〇〇円

〔証拠略〕を総合すると、原告一雄は、本件事故による受傷の診断書手数料(八通分)として金四、〇〇〇円を大村病院に支払つたことが認められるから、原告一雄は本件事故により、右金員と同額の損害を被つたものというべきである。

4  大村病院及び医師・看護婦への謝礼等

原告一雄は、大村病院への歳暮、中元及び医師、看護婦に対する謝礼等として、金六、〇二〇円を支出した旨主張するが、本件全証拠によるも右事実を認めることはできない。

5  入院諸雑費 金九、九〇〇円

〔証拠略〕を総合すると、原告一雄は、大村病院に入院中の三三日間に、貸テレビ代、電話代等の入院雑費を要したことが認められるところ、入院中の雑費として少なくとも一日当り平均金三〇〇円以上を要するであろうことは経験則に照らし、容易に推認しうるところであるから、原告一雄が入院雑費として合計金九、九〇〇円を下らない出費を要したものと認められ、したがつて、同額の損害を被つたものというべきであるが、原告一雄において、右金額を超える入院雑費を要したことを認めるに足る証拠はない。

6  見舞返費用

〔証拠略〕を総合すると、原告一雄は、入院中、今井工業他六四名から見舞の金品を受け、これに対する見舞返しの費用として金一三万五、六五〇円を支出したことが認められるが、見舞返しは見舞の金品等に対する返礼であり、元来見舞客の厚意に対する感謝の趣旨でされるものであるから、これをもつて本件事故により原告一雄が被つた損害とみるべき性質のものということはできない。

7  得べかりし利益の損失 金一〇六万三、五五六円

(一)  〔証拠略〕を総合すると、原告一雄は、本件事故当時、建築工事請負人から左官工事を下請した木山工業、株式会社今井工業、株式会社渡辺組等の左官工事業者から左官工事のうち材料を捏ね、これを塗り手の手元まで運ぶ仕事を下請し、自己の従業員又は下請職人を使つて左官手元請負業を営んでいたことが認められる。被告は、原告一雄の職業はいわゆる「手配師」であり、違法な職業であるから、これによる所得は法律上保護されるべきではない旨主張するが、原告一雄の営業形態の実質は前段認定のとおりであり、前段認定に供した各証拠によると、原告一雄が支払を受ける請負報酬及び同原告が下請職人に支払う報酬の受払方法等としては、原告一雄が請負額の約一〇%を自己の収入とし、残りの約九〇%を同原告が下請職人等に交付していたこと、木山工業の関係では、木山工業は原告一雄に請負高の一〇%を給料名義で支払い、残り九〇%を工費として支払つていたが、右は税金の関係でこのような方法を採つたものであることを認めることができるところ、これらの事実はもとより何ら前段認定を妨げるものではなく、その他叙上認定を覆すに足る資料はない。なお、〔証拠略〕中には、上記認定と異なるやにみられる供述部分も見受けられるが、この供述部分も、〔証拠略〕に照らすと、叙上認定の営業実態を表現したものと認めるのを相当とするから、何ら前段認定の事実と矛盾するものとはいい難い。したがつて、原告一雄の職業及び収入が違法なものであり、法律上保護されるべきではない旨の被告らの主張は採用できない。

(二)  前記認定の原告一雄の傷害の程度並びに治療及び軽快の経過に、〔証拠略〕を総合すると、原告一雄は、本件事故による受傷のため、昭和四五年四月二七日から同年九月までの間、入院期間以外も、ほとんど毎日自宅で療養し、同年一〇月から昭和四六年三月までの間は週平均一回現場を巡回したほかは自宅で療養を続け、同年四月から同年一二月までの間は自宅療養を続けながら、週二回ないし三回現場を巡回し、昭和四七年一月からほぼ従前どおりの頻度で現場を巡回するほど恢復したが、なお、寒冷時、雨天時等に頭痛、腰痛、足のしびれ等を感ずることがあり、現場へはいけなかつた状況に置かれ、入院中及び自宅療養中は現場責任者らと病院又は自宅において直接あるいは電話等により、打合せ、指示等をしたものの現場を巡回して各現場の作業量や作業の進展状況に応じた職人の適切な配置あるいは左官業者からの仕事の受注、現場責任者らとの打合せ、指示等に円滑を欠き、このため仕事量の減少を生じ、あるいは職人の効率的配置を行うことができず、その結果、昭和四五年中の総所得は金三七四万四、六八三円、昭和四六年中の総所得は金三五一万三、五〇一円であつたことが認められ、右各認定を覆すに足る証拠はない。しかして、原告一雄の叙上認定の入・通院状況及び原告一雄の業務内容が請負つた各現場に連絡係を配置し、この者らに適当な指示を与えることによつて業務の停滞を免れるとともに、使用中又は下請の職人の就労によつて自動的に収益を挙げることができたことなどを勘案すると、原告一雄が本件事故受傷により、昭和四五年四月二七日から昭和四六年三月までの間は、その間に得べかりし収入のうちの二割を、同年四月から同年一二月までの間はその間に得べかりし収入のうちの一割をそれぞれ失つたものと認めるのが相当である。なお、被告らは、原告一雄の収益額から所得税を控除すべき旨を主張するが、右喪失収益額から所得税を控除することは相当ではないと解すべきである(最高裁判所昭和四五年七月二四日判決・民集第二四巻第七号一、一七七頁参照)。

(三)  以上により、原告一雄の得べかりし利益の喪失による損害額を算出し、月別ホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して昭和四五年七月三一日現在の現価を算出すると、別紙のとおり、金一〇六万三、五五六円となる。

8  慰藉料 金一〇〇万円

原告一雄の傷害の部位、程度、症状及び治療経過に鑑みると、原告一雄は、本件事故により多大の精神的苦痛を被つたものと認められ、その他本件に顕われた前示一切の事情を参酌すると、原告一雄の慰藉料は金一〇〇万円が相当である。

(原告はるゑの損害)

四 原告はるゑの損害賠償(慰藉料)請求権の有無につき判断するに、前記認定の原告一雄の傷害、殊に陰萎及びこれに準ずべき症状に照らすと、このため原告はるゑが多大の精神的肉体的苦痛を受けたことは認められるが、身体傷害の場合の近親者の慰藉料請求権は、被害者が生命を害された場合にも比肩すべき、又はそれに劣らない程度の精神的苦痛を受けたときに限り、自己の権利として請求しうるものと解すべきところ、前記認定の原告一雄の傷害の程度をもつてしては、未だ原告はるゑが慰藉料を請求しうる程度の苦痛を受けたものと認め難いから、原告はるゑの本訴慰藉料請求は理由がないものといわざるをえない。

(むすび)

五 以上のとおりであるから、被告らは、連帯して、原告一雄に対し金二〇九万九、六五六円及びこれに対する本件事故発生日の後である昭和四五年七月三一日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があるから、原告一雄の被告らに対する本訴請求は右の限度で認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、原告はるゑの被告らに対する請求は理由がないのでこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条及び第九三条第一項を、仮執行の宣言につき同法第一九六条第一項の規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 武居二郎 玉城征駟郎 伊藤保信)

(別紙)

(円以下切捨)

昭和45年

=36万991円

4月分 36万991円×0.2×4/30=9,626円

5月分~7月分} 36万991円×0.2×3=21万6,594円

8月分~12月分} 36万991円×0.2×4.9384=35万6,543円

昭和46年

平均月収 351万3,501円÷(0.8×3+0.9×9)=33万4,619円

1月分~3月分} 33万4,619円×0.2×(7.8534-4.9384)=19万5,082円

4月分~12月分} 33万4,619円×0.1×(16.3918-7.8534)=28万5,711円

以上合計 106万3,556円

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